玉手箱コラム
2025.04.11
◆骨董コラム◆石川県の伝統工芸品をご紹介します♪
石川県は伝統工芸の宝庫として全国的に知られています。江戸時代、加賀藩主・前田家の文化振興策により、石川県には現代まで受け継がれる華やかな工芸文化が花開きました。現在、県内には36業種の伝統的工芸品があり、それぞれが百万石文化の歴史と進化の足跡を刻んでいます。石川県の主な伝統工芸品を紹介します。
国指定伝統的工芸品
輪島塗
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特徴: 輪島特産の「地の粉(珪藻土の一種)」を漆に混ぜて繰り返し塗る本堅地技法を用いる
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技法: 木地の傷みやすい上縁に生漆を塗る「地縁引き」などの丁寧な手作業
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魅力: 使い込むごとに美しさを増し、用と美を兼ね備えた堅牢な漆器
山中漆器
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特徴: 漉櫨を使った独特の挽物技術
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技法: 木地の肌に極細の筋を入れる加飾挽き
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製品: 豪華な高蒔絵を施した茶道具、特に棗(なつめ)の制作に定評がある
加賀友禅
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色彩: 「加賀五彩」と呼ばれる燕脂、藍、黄土、草、古代紫などの色を基調
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デザイン: 花や植物、風景など自然をモチーフにした写実的な表現
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特色: 武家風の落ち着いた気品を持つ
九谷焼
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特徴: さまざまな色絵装飾(上絵付)が特徴
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様式: 素朴で豪快な「古九谷風」、全面に赤塗りで人物などを描く「木米風」、花鳥山水等を描いた彩色金欄手で有名な「庄三風」など多様なスタイル
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多様性: 各様式によって異なる魅力を持つ陶磁器
金沢仏壇
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特徴: 上品な蒔絵の美しさが特徴
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構造: 耐久性を重視した木地、木肌を生かした彫刻、加賀彫りの金具を使用
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装飾: 障子の紗生地に金糸の刺繍、蒔絵に施された象牙や青貝の象嵌、金箔を多用した加飾から「蒔絵仏壇」とも呼ばれる
金沢箔
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技術: 金の輝きを失わせることなく1万分の4ミリ以下の厚さに、10円硬貨大のものを畳1枚の広さにまで均一に広げる職人技
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産業規模: 国内生産の98%以上を占める
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背景: 気候風土や水質が製箔に適していたことが発展の要因
七尾仏壇
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特徴: 堅牢な作りが特徴
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用途: 主に能登の農家向けに受注生産されてきた
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工夫: 扉は何層式にも折られる大型のものや、運搬に便利な解体できる「柄組み」という技法も開発
金沢漆器
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性質: 量産よりも一品物の美術工芸品としての趣が強い
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製品: 調度品や茶道具が主に作られている
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技法: 堅牢な塗りと高蒔絵、肉合研出蒔絵などの高度で繊細な加飾の「加賀蒔絵」として知られる
牛首紬
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強度: 釘に引っ掛けても反対に釘が抜けてしまうといわれるほどの丈夫さから「釘抜紬」とも呼ばれる
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素材: 2匹の蚕が入っている「玉繭」から直接糸を引き出して製糸
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質感: 絹糸は太くて節があり、素朴な美しさを持つ
加賀繍
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特徴: 模様が生地の表裏とも同じであるため糸切れなどの補修が容易
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技法: 肉入れ刺繍やボカシなど立体感のある技法から生まれる豪華で繊細な表現
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装飾: 金糸・銀糸などを多用しながらも気品にあふれている
石川県指定伝統的工芸品
和紙
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歴史: 金沢市の二俣は献上紙漉き場として加賀藩の庇護を受けていた
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種類: 加賀奉書、杉原紙、高壇紙などの高級公用紙が漉かれていた
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地域別: 金沢市の「西ノ内紙」、川北町の「雁皮紙」、輪島市の「画仙紙」など県内各地に特色ある和紙がある
美川仏壇
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技法: 漆を何層にも塗り固めたものに型を用いて立体的な紋様を施す「堆黒」の技術が特徴
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素材: 秋田ヒバやイチョウを使った太くて丈夫な木割
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構造: 錆地による堅牢な下地塗をもとに内扉に研出などが多用されている
桐工芸
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特長: 蒔絵加飾が特徴で、木目の美しさに華麗な蒔絵を施した工芸品は全国でも数少ない
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素材特性: 耐湿、耐火性に優れている桐の特性を活かした製品
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製品: 桐火鉢や花器、灰皿、菓子器などが生産されている
檜細工
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特性: 軽くて通気性も良く丈夫な檜を使用
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発展: 山仕事や農作業用の笠として発展した
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現在: 檜笠のほか網代天井やかご、花器なども作られており、素朴な民芸品として親しまれている
珠洲焼
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歴史: 長らく途絶えていた珠洲焼を昭和51年に復活させたもの
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系統: 須恵器の系統を継ぎ、粕薬を使わずに穴窯で焼き締める技法を用いる
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特徴: 珠洲の土は鉄分が多く、1200度で焼くと薪の灰が溶け、それが自然の粕薬となって独特の風合いを生む
伝統と現代の融合
石川県の伝統工芸品は、長い歴史と職人たちの技術の結晶です。加賀藩の文化政策をルーツに持つこれらの工芸品は、現代でも高い評価を受け、日常生活や特別な場面で使われています。また、伝統技術を守りながらも現代のニーズに合わせた新しい試みも行われており、伝統と革新が共存する石川県の工芸文化は、日本の宝として今後も大切に継承されていくでしょう。