玉手箱コラム

2025.04.10

◆骨董コラム◆三代目徳田八十吉 – 九谷焼に新たな輝きをもたらした革新者

三代目徳田八十吉(1933-2009)は、伝統的な九谷焼に革新的な技法を取り入れ、日本の伝統工芸を現代的に発展させた陶芸家です。彼の生み出した「耀彩(ようさい)」と呼ばれる技法は、宝石のような輝きと深い色彩のグラデーションが特徴で、国内外で高い評価を受けました。1997年には人間国宝に認定され、メトロポリタン美術館や大英博物館にも作品が収蔵されるなど、九谷焼を世界的な芸術へと高めた功績は非常に大きいものです。

徳田八十吉の系譜と三代目の生涯

徳田家の伝統

徳田八十吉は石川県に代々続く九谷焼の陶工の名前であり、現在までに四代にわたって継承されています。初代徳田八十吉(1873-1956)は、一度歴史から消滅した古九谷の作風を再現することに取り組み、「九谷八十吉」の銘を用いました。二代目徳田八十吉(1907-1997)は、初代の養子となり、九谷焼の近代化を推進しました。

三代目徳田八十吉の歩み

三代目徳田八十吉は、1933年9月14日に二代目の長男として生まれ、本名は正彦です。金沢美術工芸大学短期大学工芸科陶磁専攻を中退後、初代と二代目に師事し、1988年に三代目を襲名しました。彼は初代から古九谷の釉薬の調合法を、父である二代目からは古九谷の絵付けなどの技術を学びました。

三代目は伝統技術を継承しながらも、独自の表現方法を追求し、1991年には第11回日本陶芸展で大賞・秩父宮賜杯を受賞、そして1997年6月6日に重要無形文化財「彩釉磁器」の保持者(人間国宝)に認定されました。2009年8月26日、76歳で亡くなるまで、彼は九谷焼の発展に貢献し続けました。

九谷焼の伝統と三代目の革新

九谷焼の基本

九谷焼は、石川県に発展した色絵磁器で、「九谷五彩」と呼ばれる赤・紺青・黄・緑・紫の五色が特徴的です。伝統的な九谷焼は、山水画や人物、花鳥風月などの具体的な絵柄を描く装飾が主流でした。

伝統から革新へ

三代目徳田八十吉は、この伝統を踏まえながらも全く新しい表現を模索しました。彼の作品は従来の九谷焼とは異なり、具体的な絵柄ではなく、色の濃淡(グラデーション)だけで作品を仕上げる「彩釉(さいゆう)」という技法が大きな特徴です。

二十代の頃、宝石の澄んだ色と輝きに魅せられた三代目は、古九谷の色を使って「宝石」のような表現を目指すようになりました。この挑戦は初期には「こんなものは九谷焼じゃない」と批判されることもありましたが、後に九谷焼の新しい可能性を開く革新的技法として高く評価されるようになりました。

独創的な技法 – 「彩釉」と「耀彩」

彩釉(さいゆう)の誕生

三代目徳田八十吉は、初代から受け継いだ釉薬の調合法を基に、微妙に配合を変えた釉薬を多数作り出しました。九谷焼の伝統的な五彩のうち、ガラス質となる釉薬ではない赤(酸化鉄である紅柄)を除く四彩を基本として、黄色から緑、緑から紺、紺から紫の間に、約70もの異なる色相を生み出すことに成功しました。

これらの色目に従って筆で順番に線を描き並べ、高温で焼成すると、境目が自然に溶け合って美しいグラデーションが生まれました。これが「彩釉」と呼ばれる技法です。

耀彩(ようさい)の輝き

さらに三代目は、通常の九谷焼よりも高温(約1050度)で絵付け焼成を行う方法を確立しました。これにより、表面がガラス化し、釉の中に色彩や輝きを閉じ込めることができるようになりました。また、表面の微細な凹凸による影や乱反射を抑えるため、丁寧に磨き上げる工程も加えました。

こうして生まれた「耀彩」は、その名の通り「光り輝く色彩」を持ち、宝石のような深みと透明感を持った独特の美しさを表現しています。古九谷の五彩のうち赤を除く四彩を組み合わせて焼成し、美しいグラデーションを創出するこの技法は、三代目の最大の芸術的貢献として評価されています。

世界に認められた芸術性

国際的評価

三代目徳田八十吉の作品は、日本国内だけでなく国際的にも高い評価を受けています。ニューヨークのメトロポリタン美術館には「耀彩線文壷(ようさいせんもんつぼ)」が所蔵され、大英博物館ジャパンギャラリー入口には「耀彩壷・恒河(ようさいつぼ・こうが)」が展示されるなど、世界の一流美術館でその作品を見ることができます。

特徴的な作風

三代目の作品は、鮮やかな群青色に強い個性が見られます。釉薬で色彩を調整した深い青から明るい青へのグラデーションや、緑から青、紫へと移り変わる色彩の変化は、見る者を魅了する神秘的な美しさを持っています。作品の表面には光沢があり、光の当たり方によって色彩が変化するという特徴もあります。

九谷焼の未来を切り開いた芸術家

三代目徳田八十吉は、初代から受け継いだ伝統技術を基盤としながらも、独自の美的感覚と探究心によって全く新しい九谷焼の表現を生み出しました。彼の「彩釉」と「耀彩」の技法は、日本の伝統工芸に新たな地平を切り開き、九谷焼を国際的な芸術として高く評価される存在へと押し上げました。

三代目の死後、2010年には長女の順子が四代目徳田八十吉を襲名し、その技術と精神は今も受け継がれています。伝統を守りながら革新を恐れない三代目徳田八十吉の姿勢は、日本の伝統工芸のあり方についても、深い示唆を与えてくれるものです。

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