竜宮堂

お役立ちコラム

COLUMN

◆骨董コラム◆三代 徳田八十吉:九谷焼の色彩革命

三代目徳田八十吉 - 九谷焼に新たな輝きをもたらした革新者

三代目徳田八十吉 ― 九谷焼に輝きをもたらした革新の巨匠


三代目徳田八十吉(1933–2009)は、石川県が誇る伝統工芸「九谷焼」に革新的な息吹を吹き込み、伝統を現代へと昇華させた陶芸家です。彼が生み出した「耀彩(ようさい)」と呼ばれる独自技法は、宝石のような透明感と深みある色彩のグラデーションで知られ、国内外で高く評価されました。1997年には重要無形文化財「彩釉磁器」の保持者として人間国宝に認定され、その作品はメトロポリタン美術館や大英博物館などにも収蔵されています。

徳田家の系譜と九谷焼の伝統

徳田家は代々九谷焼の陶工として知られ、初代から四代へとその名を受け継いできました。

  • 初代徳田八十吉(1873–1956)は、失われた古九谷の技法を復活させ、「九谷八十吉」の銘を用いて九谷焼の再興に尽力しました。
  • 二代目(1907–1997)は初代の養子となり、伝統を守りつつも九谷焼の近代化を推進しました。

三代目徳田八十吉(本名・正彦)は1933年に二代目の長男として誕生。金沢美術工芸大学短期大学工芸科で陶磁を学んだ後、初代と二代目双方に師事しました。1988年に三代目を襲名し、伝統を継承しながらも新たな美の表現を追求し続けました。

革新の精神 ― 彩釉と耀彩の誕生

従来の九谷焼は、赤・紺青・黄・緑・紫の「九谷五彩」による華やかな絵付けが特徴でした。三代目はこの伝統的要素を生かしながらも、絵柄を排し「色そのもの」で表現するという新しい方向を切り開きました。

若い頃に宝石の光沢に魅了された彼は、陶磁器でその輝きを再現することを目指し、試行錯誤を重ねました。その結果生まれたのが「彩釉(さいゆう)」と呼ばれる技法です。彼は初代から受け継いだ釉薬調合をもとに、黄色から青、青から紫へと変化する約70種類に及ぶ色相を作り、筆で連続的に描き分けて焼成することで、境目が自然に溶け合う美しいグラデーションを実現しました。

さらに、通常より高温の約1050度で焼成することで、釉薬をガラス質化させ、光を内包するような透明感を与える技術を確立しました。こうして完成したのが代表的技法「耀彩」。その名の通り、光を放つような色彩と奥行きある輝きを特徴としています。

輝きが導く国際的評価

三代目の作品は、九谷焼の枠を超えた芸術作品として高い評価を受け、世界各地の美術館に収蔵されています。

  • ニューヨーク・メトロポリタン美術館には「耀彩線文壷」が、
  • ロンドン・大英博物館のジャパンギャラリーには「耀彩壷・恒河」が展示されています。

特に彼の作品に見られる深い群青色のグラデーションは、その透明感と光の反射の妙で見る者を魅了します。光の当たり方によって色が変化する繊細な表情は、まさに「陶の宝石」として多くの人々を惹きつけています。

九谷焼の未来を開く遺産

三代目徳田八十吉は、伝統を守るだけでなく、そこに新たな命を吹き込むことで、九谷焼を国際的な芸術へと押し上げました。彼の革新的な試みは、多くの後進の陶芸家たちに影響を与えています。

2009年に76歳で生涯を閉じたのちも、その精神と技術は受け継がれています。2010年には長女の徳田順子が四代目徳田八十吉を襲名し、父の意志を受け継ぎながら新たな表現を追求しています。

伝統の中に革新を見出し、美の新境地を切り拓いた三代目徳田八十吉の存在は、日本の伝統工芸における創造の可能性を今もなお照らし続けています。

地元の石川県の竜宮堂では徳田八十吉の作品を買取りさせていただきます。作品の出来栄えや大きさ、保存状態などによって査定価格が変わります。

作品をお持ちの方は是非お見積りさせてくださいませ。

LINE