お役立ちコラム
COLUMN
時代の変化とともに役目を終える家具たち:買取が難しい3つの家具
家具には、それを使っていた人々の暮らし方が映し出されています。ある時代には欠かせなかったものが、生活様式の変化によって役目を終えていく――そんな光景は、私たちの身の回りでも少なくありません。
リユース市場で注目され、価値が再評価される家具がある一方で、現代の住環境に合わず、どうしても買取が難しい家具も存在します。今回は、竜宮堂が実際に扱う中でも「再販が難しい家具」とされる代表的な3つをご紹介し、その背景にある日本人の暮らしの変化を紐解きます。
1. 座卓 ― 和の団らんを象徴するあの風景
昭和の家庭といえば、正座をして座卓を囲んで家族が笑顔を交わす光景を思い出す人も多いでしょう。日本の暮らしに深く根ざしてきた座卓は、かつてどの家庭にも一台はあったものです。低い座面に合わせて配置され、食卓や団らんの場として重宝されてきました。
しかし、現代の住宅事情は大きく変わりました。床に座る生活から、イスやソファを使う洋風スタイルが主流となり、低い座卓の出番はほとんどなくなっています。現代の住まいにはサイズが大きく、ライフスタイルに馴染みにくい点が、需要低下につながっています。
価値が残る例外
- 花梨(かりん)の木材を使った座卓は、その美しい木目が評価され、アンティーク家具として価値を保つ場合があります。
2. 衝立(ついたて) ― 空間を彩る伝統のしつらえ
部屋の一角にさりげなく置かれた衝立。部屋を仕切り、視線を遮るだけでなく、和室を美しく演出する装飾品としても重要な存在でした。来客用の応接や、茶室の背景などに使われた衝立は、日本建築の美意識を象徴する家具のひとつといえます。
ところが、現在では和室を持つ住宅自体が減少し、衝立を置くスペースや用途が限られてしまいました。シンプルな木枠や無地のデザインのものは、残念ながら需要も低いのが現状です。
価値が残る例外
- 座卓と同様に、花梨の木材を使ったもの。
- 中国図や、螺鈿(らでん)の装飾が施された美術性の高い衝立は、骨董品やインテリアとして高い需要があります。
3. 桐箪笥 ― 嫁入り道具から思い出の家具へ
日本の家庭において、桐箪笥は長らく“嫁入り道具”の象徴でした。湿気に強く、虫害を防ぐ性質を持つ桐は、着物や貴重品を守るための理想的な素材として重宝されてきました。結婚の際に新調され、長く使われることを前提とした家具には、家族の歴史がしっかり刻まれています。
ところが、時代の移り変わりとともに、桐箪笥の役割も薄れていきました。クローゼット付きの住宅が主流になり、和服を持つ人も減少したためです。特に一般的な小型の桐箪笥や装飾の少ないタイプは、現代のライフスタイルに合わず、使い手が見つかりにくくなっています。
竜宮堂でも、桐箪笥の買取は難しいのが実情です。それでも、その一棹には確かな技と温かな思い出が宿っています。もし手放すことを考えるなら、DIYや修理を通じて別の形で「思い出の家具」として受け継ぐのもひとつの方法かもしれません。
暮らしの変化と家具の未来
座卓は家族の絆を象徴し、衝立は空間の美を演出し、桐箪笥は家族の記憶を守りました。どれも日本人の暮らしを支えてきた、静かな文化遺産です。
私たちは、現代の需要の変化により買取が難しくなったこれらの家具にも、単なる「古いもの」ではない、確かな価値と物語があることを大切にし文化を未来へとつなぐ買取を心がけています。



