お役立ちコラム
COLUMN
竜宮オークションで人気の品々から見る暮らしの美意識
かつて日々の暮らしの中で使われていた家具が、いま再び注目を集めています。実用のために作られたものが、時を経て“作品”としての輝きを取り戻しているのです。そこには、職人の緻密な手仕事、木材が持つ柔らかな質感、そして経年によって生まれる深い表情があります。こうした家具を愛で、暮らしに取り入れる人が増えており、竜宮オークションでもアンティーク家具は常に人気の高いカテゴリーです。今回は、その中でも特に注目を集める3つの家具を紹介します。
丸椅子 ― 素朴さの中に宿る職人の技
まず取り上げたいのは、どこか懐かしさを感じさせる丸椅子です。シンプルな形ながら、手に取ると木の重みと温かさが伝わり、使い込まれた年月の深みを感じます。昭和時代に作られた丸椅子の中には、広葉樹を使った堅牢な作りのものが多く、表面の木肌はつるりと滑らか。それでいて時を経るごとに褐色の落ち着いた色合いに変化し、独特の風情を生み出します。
また、脚と座面をつなぐ部分にはホゾ加工と呼ばれる伝統的な技法が用いられており、金属の金具を使わずに木と木をぴたりと組み合わせて強度を高めています。見えない部分にこそ手間を惜しまない職人の技が光る逸品です。どっしりと安定感のある座り心地、そしてそれぞれに異なる木目や色の出方が、家具というよりむしろ“個性ある存在”として魅力を放っています。ナチュラルな空間にも、古民家風のインテリアにもよく溶け込み、世代を超えて愛される理由がここにあります。

ケビント ― 医療用収納棚が現代空間の主役に
次に紹介するケビントは、近年特に人気を集めるアンティーク家具のひとつです。もともとは医療用の収納棚として使われていたもので、名前はドイツ語の“キャビネット(Kabinet)”に由来します。薬瓶や器具を整然と収めていたこの家具は、無駄を省いた設計とガラスの透明感が美しく、現代のインテリアにもよく映えます。
なかでも人気が高いのは、全面がガラス張りになったタイプや、脚がまっすぐではなく、ろくろ細工のように曲線を描くタイプです。これらは一つひとつ職人の手で仕上げられたもので、量産家具にはない柔らかな表情を見せてくれます。もとは医療棚でありながら、現在ではディスプレイ用のショーケースや本棚、食器棚として再利用されることが多く、シンプルながらも空間を爽やかに演出してくれる存在です。白壁やコンクリート調の部屋にもしっくりと馴染み、レトロな温もりと現代的な洗練さを併せ持つのがケビントの魅力と言えるでしょう。

ガラスケース ― 商店文化が息づく実用美
そして竜宮オークションでも特に人気の高いのが、ガラスケースです。展示・収納を目的とした家具として昔から親しまれていますが、アンティークのものは素材と造形が現代品にはない味わいを持っています。
かつての日本のガラスケースは木製の枠組みで作られ、大正から昭和初期にかけて商店や駄菓子屋、薬屋に置かれていました。黄色みを帯びた古い木枠、年月を経てできた細かなキズ、手に吸いつくようなガラス面。その一つひとつが長く使われた時間を語り、あたたかい雰囲気を生み出しています。
高級商店や呉服屋で使われていたものは、ケヤキやナラなどの上質な広葉樹が使われ、引き出しの細工や脚の装飾にも職人技が見られます。こうしたつくりの丁寧さが、今もガラスケースが高く評価される理由の一つです。現代ではコレクション棚としてはもちろん、カフェやギャラリーのディスプレイ用としても人気があり、空間を魅せる家具として再注目されています。
古いものが語る、本物の美しさ
丸椅子、ケビント、ガラスケース――これらに共通しているのは、どれも「使うために考え抜かれた美しさ」を備えていることです。過去の職人たちは、機能性の中に美を追求し、日常の道具ひとつにも魂を込めていました。だからこそ、アンティーク家具は経年によっても魅力が薄れるどころか、むしろ味わいを深めていくのです。




