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九谷焼と日本陶磁を深く味わう専門用語集

やきもの用語集

やきものの世界には、作品の美しさや技術の奥深さを伝えるための専門用語が存在します。これらの言葉を知ることで、器に込められた職人の工夫や、焼成の過程で生まれた偶然の美しさをより深く理解できるようになります。ここでは、主に九谷焼や日本陶磁史において重要な用語を、「技法」と「特徴」に分けてご紹介します。


 

1. 絵付け・装飾に関する技法

 

用語 読み方 意味と特色
青粒 あおちぶ 大正時代に九谷焼で流行した加飾法。青い小粒の盛絵具を器面にびっしりと施し、ざらりとした質感と均整の美しさを表現する。
赤絵 あかえ 赤を基調に緑・黄・藍などを組み合わせて描く上絵付け。華やかで雅やかな印象を与え、中国が起源とされる。日本では肥前の柿右衛門が最初期の試みをしたという説がある。
色絵 いろえ 本焼きした素地の上に、柔らかい発色の絵具を乗せ、低温でもう一度焼き付ける技法。赤絵もこの一種。色彩の豊かさと繊細な筆致が魅力。
雲錦手 うんきんで 「花は雲、紅葉は錦」というテーマに基づく意匠。桜と紅葉をあしらった華やかな絵付けのこと。
雲彩 うんさい 五色の釉薬をにじませたり、ぼかしたりして雲のように見せる技法。幻想的で柔らかい景色を生み出す。
後絵付 あとえつけ 本窯での焼成を終えた後に、別の窯で絵を加えて加飾すること。後年に作品の価値を高めるために絵付けが加えられたものも指す。

 

2. 器形・釉薬・素地の特徴

 

用語 読み方 意味と特色
朝顔手 あさがおで 青磁などで見られる器形。口縁が朝顔の花のように外側へ反りひらくのが特徴。
後釉 あとぐすり 古い素地に、後から改めて釉薬をかけたもの。古い器が新たな表情を得る。
暗花 あんか 下絵を素地に彫り込み、その上から釉をかける技法。触れても凹凸を感じないが、ぼんやりと文様が浮かび上がる趣深い景色。
追覆 ついぷく 高台の内部にまで釉薬を施した状態。対義語として、高台に釉薬をかけず土肌を見せることを「土見(つちみ)」という。
色替り いろがわり 焼成中の窯変によって、釉薬の色が本来とは異なる発色になったもの。偶然による変化を「火変わり」として珍重する。
カセ かせ 焼成中に釉薬のつやが十分に出ず、不透明で漆のような質感になった状態。しっとりと落ち着いた景色を生み出す。
石はぜ いしはぜ 胎土に混じった小石が焼成時に表面へ噴き出し、粗い景色をつくること。自然の偶然性が面白みや力強さを与えるとされる。
釜印 かまじるし 窯で焼いたやきものにつける目印や標識。共同窯などで誰の作品か、どの注文かを区別するために用いられた。

これらの専門用語を知ることで、器の繊細な加飾や釉薬の偶然の景色など、焼き物が持つ奥深い魅力をより深く感じ取ることができます。


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